スプツニ子!
ハロー! スプツニ子!です。
今回は、東京都現代美術館で開催中の展覧会「うさぎスマッシュ展 世界に触れる方法(デザイン)」に出品中の新作《ムーンウォーク☆マシン、セレナの一歩》について書きたいと思います。
本作のアイデアは、アメリカが1960~70年代にかけて推進した「アポロ計画」からスタートしました。「人類を月に送ろう!」というJ・F・ケネディー大統領のかけ声から始まったこの計画は、人類初の月への有人飛行というSFマインドに溢れた夢のプランでしたが、同時にソビエト連邦をはじめとする共産・社会主義国との軍事開発競争という政治的な側面も持っていました。宇宙への夢と生々しい政治闘争のギャップに思わずクラッとしますが、ここ10数年はソーシャルメディアの台頭でアマチュアサイエンスや民間資本の宇宙開発の勢いがどんどん強くなってきて、第二の宇宙開発ブームが訪れようとしているみたいです。
作品の核になっているのは月面探査用のローバー。通常、月面上の石を採取したり、月の環境を調査する目的に使われるローバーですが、私の作品にはもう一つ別の要素があります。ローバー後部にハイヒールのかたちを模した装置が取り付けられ、走行に合わせて上下に足踏みするように動きます。もしもこのローバーをスペースシャトルで打ち上げて、月面に送ることができたなら、月面に「女性のハイヒールの靴あと」を残すことができるんです。
ローバーのうしろにとりつけられたハイヒールと靴あと
もちろん実際にスペースシャトルを打ち上げるなんて、お金も時間も想像できないぐらいかりますから、今すぐに実行はできない(かもしれない)。けれどもクリティカル・デザインは、あるアイデアを通して未来の可能性を提案していく表現です。月面ローバーと並んで本作の大切な要素であるPV映像が、スーパーヒロイン「ルナ☆ガール」に憧れる理系女子セレナの願望と成長を描く物語になっているのは、「月面に女性の足跡を残す、絶対!」というセレナの未来を示すもの。セレナは、自分のやりたいことと現実の衝突に悶々としていた理系学生時代のわたし自身でもある気がするんだけど、観に来た人に文系理系関係なく「共感する!」って言ってもらえる事が多かったりして、いろんな人の中にセレナっぽい所が隠れてるのかもって思います。
「うさぎスマッシュ展~」は、来年の1月19日まで続きます。ぜひ、実際の作品を見にきてください!
《ムーンウォーク☆マシン、セレナの一歩》の展示風景。
手前にあるのがローバー、奥の壁にはPV