日本研究・知的交流部
欧州・中東・アフリカチーム(担当:嶋根)
去る2010年3月6日、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)、ブリティッシュ・カウンシル、企業メセナ協議会の共催により、英国シンクタンクDEMOSで長らく文化部長を務めたジョン・ホールデン氏による標題の講演会を国際文化会館にて開催しました。
講演 ホールデン氏は、今回の日本滞在やDEMOSの活動から話を起し、近年の外交の大衆化や文化そのものの捉え方(ハイ・カルチャー/ポップ・カルチャーの二項対立から、公的支援を受ける文化/商業文化/ホームメード文化という三つの要素へ)の変化とその背景を踏まえて、政治が文化をつくるのではなく文化が政治を規定すると指摘、文化を外交の道具と見なすことへの異議を唱えました。その上で改めて文化の今日的な重要性を、経済やアイデンティティ、そして外国との関係の構築に絡めて説明し、文化の政治からの独立性と大衆性を強調、文化外交においては全ての人が外交官であると締めくくりました。
>>「動画スクウェア」では、講演会の映像(英語)をご覧になれます。
>> 講演録 (PDFファイル/319KB)
◆討議
講演者であるジョン・ホールデン氏に加えて、熊倉純子氏(東京藝術大学准教授)、渡辺靖氏(慶応大学教授)が登壇し、小川日本研究・知的交流部長のモデレートによりディスカッションを行いました。熊倉氏からは英国視察で見たホームレスによるオペラ活動との交流に絡めて、渡辺氏からは文化の自立性への共感の一方で国策として自国文化普及を進める国もある現状について、コメントがありました。その後も、ホールデン氏による文化の価値と実践の提議など文化そのものの捉え方や、国際的な視野での文化のあり方をめぐって、会場からの質問も含めて、議論が繰り広げられました。
◆登壇者プロフィール
ジョン・ホールデン John Holden
(英国シティー大学客員教授、英国DEMOSアソシエイト)
英国の大手シンクタンクであるDEMOSの文化部長を2008年9月まで務める。法律および美術史修士。専門は文化政策。図書館、音楽、歴史遺産など、大小数多くの文化セクターのプロジェクトに関わる。2003年6月に行われた文化の価値付けに関する会議で中心的な役割を果たし、その後も文化の価値付けについての研究を深める。英国のみならず、フィンランド、米国、オーストラリア、ニュージーランドなど多くの会議に出席。現在、クロア・リーダーシップ・プログラム運営委員会メンバーも務める。Cultural Diplomacy、Cultural Value and the Crisis of Legitimacy.など、著書多数。
熊倉純子
(東京藝術大学 音楽学部音楽環境創造科 准教授)
パリ第十大学、慶應義塾大学文学部仏文科および美学・美術史学科卒業。同大学院修了(哲学専攻)。1992年から2002年まで(社)企業メセナ協議会に勤務。企業のメセナ活動から地域型アートプロジェクトなどの研究・開発に携わる。2002年より現職。専門は文化支援、アートマネジメント。
渡辺靖
(慶應義塾大学 環境情報学部 教授/大学院政策・メディア研究科委員)
ハーバード大学大学院にて博士号を取得。ケンブリッジ大学、オックスフォード大学、ハーバード大学客員研究員を経て、2006年より現職。専門は文化人類学、文化政策論、アメリカ研究。著書に『アフター・アメリカーボストニアンの軌跡と<文化の政治学>』(サントリー学芸賞、アメリカ学会清水博賞受賞)、『アメリカン・コミュニティー国家と個人が交差する場所』、『アメリカン・センター ―アメリカの国際文化戦略』など。