JF便り 情報センター(JFIC)編 17号 2009(平成21)年度 国際交流基金賞授賞式

情報センター(JFIC)
所 純子


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2009年10月6日に第37回目となる国際交流基金賞授賞式がホテルオークラ東京にて開催されました。国際交流基賞は、国際文化交流に特に顕著な功績のあった個人または団体を顕彰するもので、1973年に開始されました。
2009年度は、文化芸術交流部門、日本語部門、日本研究・知的交流部門より各1名、次の3名が受賞されました。


jf-ab17-2.png◆文化芸術交流部門受賞者:
ボリス・アクーニン (Boris Akunin)
(本名 グレゴリー・チハルチシヴィリ)
(作家) [ロシア]
◆日本語部門:
全米日本語教師会連合(Alliance of Associations of Teachers of Japanese[AATJ])
(代表:スーザン・シュミット〔事務局長〕) [米国]
◆日本研究・知的交流部門:
アーサー・ストックウィン (James Arthur Stockwin)
(オックスフォード大学日産日本問題研究所前所長) [英国]



jf-ab17-3.png文化芸術交流部門
ボリス・アクーニン(Boris Akunin)

(作家) [ロシア]
アクーニン氏はロシアでは人気のベストセラー作家。日本文学研究者・翻訳者として、日本文学をロシアに紹介すると共に、推理小説シリーズを初めとする多彩な執筆活動において日本文化の紹介に貢献し、また、ロシアを代表する文化人のひとりとして日露文化交流に貢献されていらっしゃいます。「もう私は自分の日本語に自信がないので英語で話します」と一言おっしゃってアクーニン氏のスピーチは始まりました。日本の言葉、国、人々について学ぶにつれ、日本に恋心を抱かないなんてありえない、ご自身はもう10年前に日本文学研究者であることを辞めてしまったけれど、とおっしゃりつつ、「この日本に恋する気持ちは一生もので一度かかったら生涯治らない病のようなもの」と、日本に対する熱い思いを、時にはユーモアも交えつつ、淡々とクールに語られました。普段はあまりネクタイをなさらないそうで、今回、天皇皇后両陛下にご接見を賜り、授賞式に参加するということで、急きょネクタイを買っていらしたそうです。次にそのネクタイを再びされるのはどういう機会になるのでしょうか。


jf-ab17-4.png日本語部門
全米日本語教師会連合(Alliance of Associations of Teachers of Japanese[AATJ])

(代表:スーザン・シュミット〔事務局長〕) [米国]
AATJは米国の日本語教育団体で、全米規模の日本語教育団体の連合体として、各団体の活動の調整を行なうと共に、研修事業や情報交流事業を実施することによって、初・中等教育段階から高等教育段階に及ぶ米国における日本語教育の発展に大きく貢献しています。その団体の事務局長を10年間シュミット氏は務めていらっしゃいました。AATJは、アメリカの教育を取り巻く厳しい条件のなか、現在3,000人以上おられるアメリカの日本語の先生方に対し、必要な支援を行ない、日本語の教育者たちの声をとりまとめています。アメリカにおいて日本語教育が成功を収めてきたのは人に恵まれたからとおっしゃるシュミット氏。色々なきっかけで日本語を学ぶ学習者とそれを懸命にサポートする先生方ともに仕事をする機会に恵まれて、そしてその組織を代表して授賞式に出席できたことに感謝の意を表されました。とても気さくでフレンドリーなシュミット氏は実は以前、東京に20年間住んでおられ、氏にとって東京はいわば第二の故郷。今回の短い滞在の間で、サントリー美術館、大倉集古館、リニューアル・オープンしたばかりの根津美術館を見て回られたそうです。「新しい根津美術館、とてもいいですよ。ぜひ行ってみてくださいね。」と薦めてくださいました。


jf-ab17-5.png日本研究・知的交流部門
アーサー・ストックウィン(James Arthur Stockwin)

(オックスフォード大学日産日本問題研究所前所長) [英国]
ストックウィン氏は英国を代表する日本研究者として現代日本政治の研究において優れた業績を挙げ、英国における日本研究を促進すると共に、オックスフォード大学日産日本問題研究所所長として対日理解の促進と日英の学術交流に大きく貢献されました。いつも穏やかでやさしい微笑みをたずさえたストックウィン氏が、初めて日本を訪れたのは1962年1月。当時はまだ大学院生でいらしたそうです。夫人と生まれてまだ6週間のお嬢さんとともに貨物船に乗って到着したのは三重県の四日市港でした。それから15カ月間東京にお住まいになり、東京オリンピックに向けて高度経済成長真っ只中の日本で日本政治と外交政策を学ばれました。若き英国の学者夫妻がみた1960年代前半の東京はまだ都電がガタガタと音をたてて走っており、地下鉄も丸の内線と銀座線しかなかった時代。そしてそれはまた戦後、日本が自国の新たな国際的立場を確立しようと懸命になっていた時代でした。 その姿をまのあたりにして、感銘をうけたことがずっと忘れられないそうです。日本研究を通じて英国民の意識の中にしっかりと日本という国を根付かせるという努力にかかわることができたのは素晴らしい経験でしたと結ばれました。



今回のスピーチの中でお二人の方々が、海外の方が日本や日本語に興味をもつきっかけとして、アニメ、漫画、ポップカルチャーを上げられていらっしゃいましたが、私たちが思っている以上にこれらの要素が現在の日本が認識されるキーワードになっているということを垣間見た思いがいたしました。
受賞者の方々がこれからも益々ご活躍されることと、ご自身の国と日本との友好的な関係を推進してくださることを願ってやみません。


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授賞式では、三橋貴風氏(尺八)、吉村七重氏(筝)により邦楽『双魚譜』を披露していただきました。





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授賞式翌日には、今年度の受賞者も例年同様、皇居にて天皇皇后両陛下の御接見を賜りました。






また、受賞記念講演会が行なわれました。
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【関連情報】
jf-abicon_wk.jpg『をちこち』32号(2009年12月1日発行)に「2009年度 国際交流基金賞 授賞式 受賞のことば」を掲載しています。

jf-abicon_tayori.jpgJF便り<日本語教育編・20号>では、スーザン・シュミット氏講演会のもようを掲載しています。

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