中原 仁(音楽・放送プロデューサー)
スカパラ featuring エミシーダ『Olha pro céu』
国際交流基金(ジャパンファウンデーション)は、リオ・デ・ジャネイロ・オリンピック・パラリンピックの開幕に先立ち、2016年7月29日、30日に日本ブラジル共同制作ポップスコンサート「上を向いて歩こう~Olha pro céu(オーリャ・プロ・セウ)~」をリオ・デ・ジャネイロで開催しました。本コンサートには、日本からは東京スカパラダイスオーケストラ、マルシアが、ブラジルからは、実力派として高い人気を誇る歌姫ヴァネッサ・ダ・マタとラップ界を代表するエミシーダが加わり、日本とブラジルを跨ぐ音楽の架け橋を実現しました。本コンサートの制作に携わり、長年、音楽を通して日本とブラジルを繋ぐ活動をされている音楽・放送プロデューサーの中原仁氏に、現地でのコンサートの様子をご寄稿いただきました。
尚、全日満席と大好評を得た本コンサートは、東京スカパラダイスオーケストラ、エミシーダが参加し、2016年11月29日に東京でも開催されます。「上を向いて歩こう~Olha pro céu~」を東京で再現し、リオ・デ・ジャネイロ・オリンピックから東京オリンピックへのバトンタッチを盛り上げます。
2015年11月、東京スカパラダイスオーケストラが初めてブラジルを訪れ、現地のヒップホップを代表するカリスマ的なラッパー、エミシーダとの共演でレコーディングした『上を向いて歩こう』の最新ヴァージョン『Olha pro céu(オーリャ・プロ・セウ)』。この曲から、国際交流基金主催の日本ブラジル共同制作ポップスコンサート「上を向いて歩こう~Olha pro céu~(オーリャ・プロ・セウ)」のプロジェクトがスタートした。さまざまな縁と出会いが輪になって実現したプロジェクトで、僕も約30年間、音楽でブラジルと日本を結ぶ仕事に関わってきた立場から制作チームに入れていただき、微力ながらお手伝いすることになった。
リオデジャネイロ・オリンピックの開幕まで1週間に迫った7月29日と30日、リオの名門ホール、VIVO RIOで開催された「上を向いて歩こう~Olha pro céu~(オーリャ・プロ・セウ)」。出演は日本から、東京スカパラダイスオーケストラ、マルシア。ブラジルから、ヴァネッサ・ダ・マタ、エミシーダ。
スカパラのライヴにリオの人々も熱狂
前日にはスカパラがテレビのワイドショー番組に生出演してエミシーダと共演し、当日には大手新聞社の文化面にスカパラの紹介記事が大きく掲載されるなど、地元メディアからも注目を集めたコンサート。その模様をレポートしていこう。
開演直前、坂本九が歌う『上を向いて歩こう』が流れ、この曲の歴史を綴った映像が場内の大型スクリーンに流れた。締めくくりはスカパラとエミシーダの録音風景。続いてマルシアが『上を向いて歩こう』をポルトガル語に翻訳した『Olhando pra cima』をアカペラで歌いながら登場し、ヴァネッサ・ダ・マタを迎え入れた。
バンドを従えて登場したヴァネッサ・ダ・マタは、今世紀のブラジルのポップスを代表する人気歌手。この日も多くの曲でオーディエンスが一緒に歌い盛り上がった。また、レゲエやソウルの要素も取り入れた幅広い音楽性が彼女の特徴で、その姿勢はスカパラにも通じる。ラストにエミシーダが登場し、自身の新作でヴァネッサとデュエットしたヒット曲『Passarinhos(小鳥)』を、この日はヴァネッサのバンドとの共演で披露した。
休憩時間には昨年、スカパラがリオを訪れた際、ファヴェーラ(スラム街)の子供たちが非行や犯罪に走らないよう無償で音楽教育を行なっているNPO、ファヴェーラ・ブラスの子供たちと音楽で交流した映像が流れ、いよいよスカパラのライヴ。ステージ狭しと動きながら繰り広げるパワフルでエネルギッシュなパフォーマンスはあっという間に初対面のブラジル人の心をつかみ、立ち上がってステージ前に詰めかける客が続出した。
場内の熱気が最高潮に達したところでエミシーダが登場し、『Olha pro céu』をフリースタイルのラップもまじえて熱唱。次いでマルシアがスカパラとの共演で歌い、フィナーレは再びエミシーダとヴァネッサ・ダ・マタを迎えて全員で『上を向いて歩こう』のポルトガル語ヴァージョン。この永遠の名曲を軸に、音楽が国境も文化も越えて全ての人々の心をひとつに結び、感動的なフィナーレとなった。
フィナーレはスカパラ、マルシア、エミシーダ、ヴァネッサ・ダ・マタの全員で『Olhando pra cima』
客席にはブラジルの著名な音楽家やプロデューサーの姿も多く、終演後には口を揃えて「スカパラは素晴らしい!感動した!」と大絶賛。また、2日目の開演前にはスカパラがファヴェーラ・ブラスの子供たちを会場に招いてワークショップを行った。スカパラのメンバーは「初めて会った去年の11月と比べてみんな背が大きくなり、技術も格段に進歩している!」と感動の表情で語っていた。
ファヴェーラ・ブラスの子供たちとの交流シーン
国内外のビッグアーティストのサインが記されたバックステージにて
そして2016年11月末。エミシーダをブラジルから迎えて「リオから東京へ:上を向いて歩こう~Olha pro céu~(オーリャ・プロ・セウ)」東京公演が行なわれる。
【関連リンク】
■「リオから東京へ、音楽で繋ぐ : 日本!ブラジル! ~Olha(オーリャ) pro(プロ) céu(セウ)~」東京公演(Saigenji、エミシーダ出演)
中原 仁(なかはら じん)
1954年、横浜生まれ。1985年以来、50回近くブラジルを訪れ、取材のほか現地録音のCD約15タイトルの制作に従事。J-WAVEの長寿番組「サウージ!サウダージ・・・」などラジオ番組の制作/選曲、コンピレーションCDや空間BGMの選曲、音楽イベントのプロデュースを行ない、ライター、DJ、MC、カルチャーセンター講師もつとめる。共著の新刊書『リオデジャネイロという生き方』(双葉社)発売中。
http://blog.livedoor.jp/artenia/