ニューヨーク日本文化センター
ニューヨーク日本文化センターでは毎年、アメリカ在住の日本文化専門家を中南米へ派遣するプログラムJapanese Arts in Latin America (通称JAILA: 在米日本文化専門家中南米派遣事業) を実施しています。遠い日本からではなく、日本に関する専門家の人材が豊かに存在する北米から中南米へ行っていただくことによって、より多く、よりきめ細やかな交流の機会をつくるのがこのプログラムの狙いです。2010年は、4組の専門家が渡航し、各地で大きな反響を呼びました。今回はその4組の多彩な活動をご紹介します。
■日系人リーダー、ブラジル4都市を訪問
1人目は、シアトルのKING5テレビでニュースキャスターとして活躍するロリ・マツカワさん。シアトル同様日系人の多いブラジルの4都市(サン・パウロ、トメアスー、ベレン、ブラジリア)を訪問し、「Telling Our Story: Coalition Building and the Asian American Journalist Association」と題した講演を発表、在米日系人の歴史を辿り、自分の体験を語りつつ、現在の日系人ジャーナリストの立場に関してお話いただきました。
同じ日系人社会でも、アメリカとブラジルでは歴史的背景が大きく違っており、講演に参加した方からも「あまり知らなかった日系アメリカ人のことについて知ることが出来て有意義だった」「ブラジルの移住者と比べると米国の移住者はもっと苦労をしたことがわかった」などたくさんのコメントをいただきました。
ロリ・マツカワさん(中心)と日系人のフランシスコ・サカグチさんとお母さん、パラー州トメアスー日本人移住地にて
■カリブの人々、日本の伝統楽器に驚嘆
2組目は、ニューヨークを基盤として活動する二人の邦楽奏者、渡辺薫さん(篠笛、和太鼓)と黒澤有美さん(二十弦箏)。コスタリカ、ホンジュラス、トリニダード・トバゴ、パナマの4カ国にて公演をしていただきました。日本の伝統音楽、それぞれが作曲した現代的な曲を披露した後に、各国の有名な曲を篠笛や箏で演奏すると大いに盛り上がり、各地で大喝采を浴びました。
公演の中に組み込んだ、観客参加型の和太鼓を使ってのリズムワークショップはどの国でも大変な人気でした。写真はホンジュラスでの様子。
二十弦箏を立てて構造を説明、初めて目にする楽器に客席からは思わずため息が。「箏があまりに大きかったので大変印象に残った」という観客からのコメントも。写真はトリニダード・ドバゴ。
■クラシックピアノ、ラテン三カ国を巡る
3人目はロサンゼルス在住のピアニスト、上野淳子・ギャレットさん。当センターで初めての派遣先となったキューバへ赴き、西洋の音楽と日本の音楽の歴史をピアノで辿るデモンストレーション公演を披露。その後エルサルバドルとメキシコでも公演を行いました。キューバの音楽学校での公開レッスンでは学生たちのレベルの高さを実感。学生の一生懸命な姿勢に満員の会場は熱気にあふれ、音楽を通してまさに「国境を越えた時間」が持てた、との感想をいただきました。
エルサルバドルにて演奏する上野さん。
公演後、サインを求められる上野さん。エルサルバドルにて。
■ジャマイカに日本のジャズを運ぶ
4組目はニューヨークで活躍しているジャズフルート奏者YUKARIさんと、ジャズピアニスト山本恵理さん。ジャマイカにて「日本のジャズの夜」と題して公演とワークショップを開催していただきました。公演では現地の音楽家とのセッションを行い、ワークショップでは日本語の「おはよう」や「こんにちは」を使ってジャズのリズムになじんでもらうなど、有意義な文化交流が行われました。今回のステージで紹介した「上を向いて歩こう」や「りんご追分」は、ジャマイカのミュージシャンにもカバーされていますが、オリジナルは日本の歌だということを初めて知った方が多いということに山本さんは驚かれたそうです。またYUKARIさんは、ワークショップなどで実現した一人一人との交流で、日本のすばらしさを伝えていくことが大切であることを改めて感じさせられた、という感想をいただいています。
浴衣姿にて、現地のサクソフォン奏者Dean FraserさんとクワイヤーグループUniversity Singersとの共演。
ジャマイカの山口大使夫妻と、現地スタッフと。現地での受け入れは各国の日本大使館にご協力いただきました。
平成22年度のJAILA事業に関するリンクはこちら(英語):
http://www.jfny.org/arts_and_culture/jaila.html