ブラジルのサンパウロ日本文化センターでは2010年1月にブラジル日系社会との協力により、巡回展覧会「日本の子ども60年展」を実施しました。この写真展は、ジャパンファウンデーションが製作・所有する巡回展示作品の一つで、終戦直後から現在にかけて時代の影響を大きく受けながらもひたむきに生きてきた子供たちの写真100点を通じて日本社会の変遷を紹介しました。
基金写真展の写真
「基金巡回展「日本の子ども60年」の写真パネルより。戦後復興期、たくましく生きる子供達の写真。」
故オオハラ・ハルオ氏の写真
「モレイラ・サーレス財団から提供を受けた故オオハラ・ハルオ氏の写真より。ブラジルへ入植した日本人移民の子供たち。」
1月といえばブラジルではまだ休暇旅行に出かけている人が多い時期ですが、2週間という短い会期にも関わらず、1千人近い方が鑑賞に訪れました。また、主要テレビ局2社を含むマスメディアからの取材もあり、大きな反響を得ました。
展示のテーマが「子供」や「戦後社会の復興」という一般の方やマスメディアが関心を持ちやすいテーマだったこともあると思いますが、実はもう一つある仕掛けがあったのです。それは、単に日本の子供の写真だけでなく、当地の日系移民の子供達の写真の展示も組み合わせることにより、地球の反対側で同じ時代を過ごした日本の子供達とブラジルの日系移民の子供達を対比するという試みです。モレイラ・サーレス財団の協力により、ブラジルのコロニアでの日系人の子供達の生活を記録した故オオハラ・ハルオ氏の写真を大型モニターでスライド上映できたことで、日本とブラジルの関わりもクローズアップできました。サンパウロは世界で最大の日系社会を有する都市であり、まさに戦後日本で幼少期を過ごし、その後ブラジルに移住された方も多数いるため、歴史的背景からも、今回の写真展は意義深いものだといえるでしょう。
来場者は「父から聞かされた過去の出来事、戦争の話、戦後の苦しさを改めて考え直した」「子供、つまり基盤から文化の再建を考えるのにとても良い機会。戦後からの再建に限らず、世界平和あるいは環境問題、現代のことも考えされられた」などの感想を寄せていました。