ロンドン日本文化センターでは英国全土を視野にロンドンに偏らず各種事業の地方展開に心がけており、この3ヵ年で当センターを拠点として展開した事業はおよそ1.5倍に増え、またこれら事業への参加者数も倍増しています。数量的な増強もさることながら、センタースタッフが大事にしている「視点」にかかわるイベントを2つ紹介します。
ひとつ目は、3月から6月にかけて行ったJapan Webpage Contest for Schools in UKです。このコンテストでは全英の小中高等学校に呼びかけ、日本に関する学習プロジェクトや取組みをウェブサイトにアップして、インターネット上で公開し、その成果を競います。クラスや学校単位に留まりがちなこうした教育・学習活動の成果をグローバル化することにより、日本に関する情報共有や更なる学習の励みにし、また各地で同様の取組みが増えるきっかけとしたいと考えました。短い募集期間でしたが32校の参加があり、予選を経て4校が受賞し、ロンドンの日本大使館で授賞・成果発表会が行われました。コンテストのウェブサイトhttp://www.japanwebpagecontest.org.uk/ では、参加した各校の楽しいウェブサイトがご覧いただけます。
特筆すべきは参加校のうち12校、受賞校のうち2校は日本語教育を行っていない点です。このコンテストがグッドプラクティスの共有促進の効果はもちろん、これらの学校に日本語教育が導入検討される契機となることを強く促す機会にもなりました。また、次世代を担う子供たちが日本語の勉強以外の切り口でも日本の文化芸術や社会を学ぶ取組みができることを広く学校教育関係者に周知でき、日本理解学習の輪を広げるチャンスも得ることができたと考えています。
ウェブサイトコンテスト 入賞校と審査員
ウェブサイトコンテスト 優勝校と審査員
ふたつ目は文化芸術分野で昨年度に行った「日本の音」シリーズとでもいうべき一連のレクチャーデモンストレーションです。鍵盤ハーモニカや大正琴の専門家によるワークショップ、英国で活躍する日本人DJのトーク、日本から招いた研究者による「浮世絵に描かれた楽器」や「日本の音文化」のレクデモなど、ユニークな切り口で「日本の音」に迫るイベントとなりました。世界の文化芸術事業がしのぎを削るロンドンでは、若者をはじめ色々なセグメントの対象者に向けて文化発信する工夫が求められます。このようなロンドンならではの需要に応える上で「日本の音」シリーズが新たな展望につながる契機となることを期待しています。
「日本の音文化」で紹介した楽器
最後に日本研究・知的交流分野でも、2009年度の国際交流基金賞(日本研究部門)を受賞したアーサー・ストックウィン先生がこれを記念してオックスフォード大学に現代日本研究のための奨学金制度を寄贈されたこと、東アジアにおける文化遺産について日英中韓の専門家ワークショップとシンポジウムを実施したこと、当センターが支援したプロジェクトが契機で日本の地理学者(共生文明学)が英国王立地理学協会の名誉会員に推挙されたこと、とユニークなニュースをお届けできることをスタッフ一同喜ばしく思います。