ジャパンファウンデーション ニューヨーク日本文化センターの主催で、川崎和男大阪大学教授による「ピース・キーピング・デザイン:車椅子からワクチン注射器まで」と題した講演会が、マンハッタンの中心で開かれました。
人工心臓のデザインについて質問に答える川崎和男氏(右奥)
撮影:金谷一朗
川崎氏は世界中に著名な工業デザイナーで、車椅子・ハサミおよび鉛筆削りといった多くの作品が、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久収蔵品となっています。また"Kazuo Kawasaki"のブランド名による眼鏡は、昨年米国の副大統領候補となったサラ・ペーリン アラスカ州知事が使用していたことで話題になりました。この講演会では、以上の作品に加えて、人工心臓についての紹介もありました。
ご自身も身体障がい者である川崎氏の仕事は、人間とその福祉に対する深い考察から育まれています。この講演会で川崎氏は、「いのち」「きもち」そして「かたち」について、その哲学を語りました。
この講演会はニューヨークの「国際デザイナー・ネットワーク財団」(IDNF)との共催により実施されましたが、デザイナー・科学者・アーティスト・企業人などの聴衆が集まり、高層ビルの最上階にあるソニークラブが満員の盛況となりました。
講演の中でとくに川崎氏は、現在東京大学・大阪大学と平行して開発研究を進めている人工心臓について語りました(写真参照)。その理論は、位相幾何学(トポロジー)に基づき、外部と内部の境い目のない立体物の制作をめざすものだということです。このテーマは、聴衆に知的な関心を喚起したようです。講演のあと、何人もの聴衆が川崎氏を囲み、質問したり謝辞を伝えたりと交流していました。
川崎氏の講演会はニューヨークのほか、シカゴ、ワシントンでも開かれ、それぞれ成功を収めました。
・ シカゴで行なわれた講演会の報告(在シカゴ日本総領事館 Webサイト)