2017.3.30
五百旗頭真
「国大なりといえど、戦好まば必ず亡ぶ。」山本五十六が好んで揮毫した東洋の格言である。戦前の日本はアジアで唯一近代化された軍隊を持ち、従って戦えば必ず勝てた。それをいいことに戦を好むに至った満州事変以降の日本であった。そして格言通り、日本は昭和20年に国を亡ぼす結果となった。それに懲りた戦後日本は、経済を中心に平和的発展による再生を求めた。それは成功した。1960年代に奇跡の高度成長を遂げた日本は、西欧諸国を次々にGNPで追いつき追い越した。経済成長はいい。しかし経済一辺倒でいいのか。「国家は力の体系であり、利益の体系であり、価値の体系である」(高坂正堯)。経済復興を遂げた日本は、やはり本格的な軍事力を持つべきか。否、あの戦争の誤りだけは繰り返したくない。むしろ文化的価値を経済力に添えるべきではないか。1972年の国際交流基金の創設は、そうした自問から生まれた選択であった。