堀俊雄(日中交流センター事務局長)
国際交流基金日中交流センター(以下「日中センター」)は、日本と中国の将来を担う若者たちが心と心を結び合う"心連心"をキーワードに、日中間の青少年交流を推進していくことを目指し、2006年に誕生した。筆者は民間出身かつ初代事務局長として、設立当初から携わった。
日中センターは、2005年度補正予算で認められた政府出資金と既存の国際交流基金の資金をあわせたファンドの運用益を運営原資とし、事務局とスタッフを擁するヒト・モノ・カネが揃った布陣でスタートした。
済南ふれあいの場での茶道体験会
当初想定された中核事業は以下の3つであるが、これは10年を経た今でも著変なく、安定的に継続している。
(1) 中国高校生長期招へい事業
日本で約1年間の留学生活を経験した中国の高校生は、この10年で329名にのぼり、44都道府県での受入が実現した。すでに高校を卒業した268名のうち、125名が進学・就職のため再来日している(2016年4月時点)。これは全体の47%にのぼり高い割合といえるのではないか。
第10期生来日研修 街歩き
(2) 中国「ふれあいの場」事業
中国の地方都市に設置した「ふれあいの場」では、日本の雑誌、書籍、映像資料等を通じ日本の最新文化事情に触れることができる。また、「ふれあいの場」を使ってさまざまな日中交流イベントが行われている。本年秋には湖南省長沙に14ヶ所目の「ふれあいの場」をオープンする予定である。
(3) ネットワーク強化事業
主に「ふれあいの場」を使って日中両国の大学生が共同で交流イベントの企画から運営まで行う交流事業が主な事業である。
昆明ふれあいの場で開催した大学生交流事業:JAPANESE SPRING FESTIVAL
上記3事業の中で、もっとも苦労したのが中国高校生長期招へい事業である。国際交流基金は十代の青少年を1年間の長きにわたり預かる事業をそれまで手がけたことはなく、ゼロからの立ち上げとなった。
特筆すべきは、この10年で日中両国においてたくさんのOB・OG達が誕生し、交流の輪を新たに創り、広げ、増やしていることである。日本で留学を経験した高校生が、やがては大学生となり、社会人となり、それぞれ自分の夢や目標に向かって進んでいく中で、「ふれあいの場」の交流イベントに協力したり、自ら日中交流プログラムを企画・運営したり、交流の担い手として頼もしく成長している。
そして今年7月、受入高校やホストファミリー、心連心卒業生、「ふれあいの場」関係者、外務省や中国大使館など300名近くの方々が日中センター設立10周年を祝って参集してくださった。レセプション会場は終了時刻を過ぎても、名残惜しむ人々で会場が埋まった。
卒業生代表によるスピーチ
今回の設立10周年レセプションは一つの節目に過ぎない。日中センターは次の10年を展望して、さらに前に進んでいく。これから始まる次の10年でもこれまで同様、日中両国の青少年が互いに交流を深めつつ成長していく姿を見守っていく所存である。
心連心(心と心をつなぐ)中国高校生 日本で暮らした11か月(2015-2016 第10期生)
国際交流基金日中交流センター 10年の歩み(日本語)
国際交流基金日中交流センター 10年の歩み(中国語)
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