ブダペスト日本文化センター
ハーモシュ・エステル
1990年代半ば以降、マンガやアニメといった日本のポップカルチャーが日本文化の一つとして世界中に急速に広がり、高い評価を受けるようになったことは周知の通りである。今や日本のマンガのスタイルに倣ったマンガが世界でも数多く発表され、人気を博している。
2012年3月、国際交流基金では、日本のマンガ教育をリードしてきた京都精華大学と共催で、「日本とマンガ」というテーマのもと、文化講演会、描き方教室、さらに日本語講座という3本だての事業を基金の海外拠点のひとつであるハンガリーのブダペストで実施した。
まず、3月6日には、少女マンガの著名な作家であり、京都精華大学マンガ学部長の竹宮惠子先生と同学国際マンガ研究センター長でありマンガ学部准教授の吉村和真先生を講師にお迎えし、「マンガブームの原点となる日本マンガ文化」というタイトルで文化講演会を開催した。
吉村先生より、日本のマンガ雑誌に関するデータや情報、そしてそれらに基づく様々な角度からの分析が紹介され、聴衆にマンガとその出版業界に関する新鮮な視点が提供された。マンガを理解するためには、マンガ家が描くマンガを見るだけでなく、業界の現状把握とデータや資料の活かし方を知ることも大切であることを気付かされた。
これに続き、竹宮先生より、「MANGAと歩いて45年」と題し、スクリーンに自作のマンガを映しながら、少女マンガの流行、少年を中心に描くようになった自身の作風や変遷などについてお話をいただいた。マンガ制作の舞台裏のほか、作品制作者としての立場からのマンガの創作方法についても伺うことができた。会場の現代美術館にはおよそ150名の熱心な観衆が訪れ、講演の後にはたくさんの質問も寄せられ、講演会は成功のうちに幕を閉じた。
また講演会場では、竹宮先生をはじめ、日本の少女マンガ界を代表する14人のマンガ作家の「原画(ダッシュ)」展示が行われた。「原画(ダッシュ)」とは、原画をコンピューターに取り込んで微妙な色調整を施し、限りなく実物に近づけた複製。印刷文化としての漫画の特性を活かし、原画の筆致に触れてもらう機会を広げる手法として、竹宮先生が考案し、国際マンガミュージアムでその研究と収集が進められている。
文化講演会「マンガブームの原点となる日本マンガ文化」、150名もの聴衆が詰め掛けた。
吉村和真・京都精華大学国際マンガ研究センター長がマンガとその出版業界に関して豊富なデータを分析をもとに紹介した。
自身が著名な少女マンガの作家である竹宮惠子・京都精華大学マンガ学部長。講演会の後も、多数のファンが周りに集った。
マンガ文化講演会の関連事業として、三日間にわたる「マンガの描き方教室」も実施された。参加者は、およそ100名の応募者から事前選考された、16歳から41歳という幅広い年齢層のアーティスト等で、ブダペスト市内およびハンガリー各地からこの教室に集まってきた。日本的なマンガのキャラクターの描き方が基礎から学べるこのワークショップでは、まず、多種多様な専門道具について紹介が行われ、続いてキャラクター・デザインの流れについての説明があった。そして、キャラクターの描き方を、身体のパーツごとに細かく聴講し、京都精華大学国際マンガ研究センターの講師によるお手本を見た後、受講者が実際にペンと紙を取り、表情豊かなキャラクターを描いた。マンガ描き方教室に参加したことで、受講者がオリジナルのマンガ作りを楽しめたことに加え、マンガの描き方を通して、自分の想像力や個性を発見することもできたようだ。
「マンガの描き方教室」の参加者。真剣な表情でキャラクターの描き込み。
一連のマンガ事業の最終日の3月9日には、マンガで使われる擬音語や擬態語といったオノマトペや、キャラクターの台詞の特徴を学習することを目的とした日本語講座「マンガの日本語を知ろう!」が国際交流基金ブダペスト日本文化センターで開催された。日頃よりマンガに親しんでいる受講者は、「アニメ・マンガの日本語」サイト(国際交流基金制作)等を通じて、マンガ独特の表現形態に関する理解を深め、少年、お嬢様、侍、大阪人といったキャラクターの役を演じながら、キャラクター独特の言い回しに触れ、教室は大いに盛り上がった。
ハンガリーの雑誌で紹介されました
(原文・日本語)