北京日本学研究センター訪日研究中間報告会

アジア・大洋州チーム 稲田 久美子


beijing_japan01.jpg

 北京日本学研究センターは中国における日本語・日本研究、日本との交流に携わる人材の養成を目的として、国際交流基金と中華人民共和国教育部双方の協議により、1985年に設立された教育・研究機関です。現在は「大学院修士・博士課程」を有し、さまざまな実績を重ね、昨年設立25周年を迎えました。
修士課程のカリキュラムには「訪日研究」が含まれ、学生たちは4か月間日本全国の大学に滞在し、受入先の教官のもと、資料収集と論文草稿作成を行います。日中双方の指導を受け、研究を進められるのも北京日本学研究センターの大きな特徴です。
例年は3月31日に来日するのですが、今年は東日本大震災の発生により、実施が危ぶまれました。たくさんの外国人が母国へと戻るなか、本センターの学生たちも来日するかどうかの決断を迫られましたが、日本からの派遣教授や、日本留学中の卒業生による生活状況の説明を受けて、参加の意思を固めていきました。そして、学生それぞれが心配する家族を説得して全員の来日が決定しました。
 昨年までは全員揃って東京に来日していましたが、今年は中部地方以西の大学で学ぶ8名の学生が4月4日に関西空港から、中部地方以東の大学で学ぶ12名の学生が同月14日に羽田空港から、と2グループに分かれて来日しました。
 6月17日には訪日研究の中間報告会が基金本部で行われました。全国の大学で研究する修士25期生、全34名が一堂に会し、それぞれの来日の感想、生活のようすや、研究の進捗状況が報告されました。学生たちは、互いの報告を聞いて大きな刺激を受けたようです。
まず、来日の感想として、「日本語を勉強して、ずっと日本研究をしてきましたが、今回の初来日で、まさに『百聞は一見に如かず』を体感しています。本当に来て良かったです」。「道を尋ねたら、目的地まで案内してくれる人と出会いました。日本人の親切さに感動しました」。「優秀な研究者と接することで、自分の成長も促されます。日本の環境は、私を成長させてくれました」といった声が挙がりました。
 不安に思われていた地震や原発事故の影響についても、「中国では一度も地震を経験したことがなく最初は不安でしたが、余震を8回くらい体験しても慌てずに対応できました」。「生活への不安を感じることはなく、母が持たせてくれたマスクも結局2回しか使いませんでした」など、余裕を感じさせる発言が多く聞かれました。
 また、研究以外の交流も盛んで、「サークル活動を通して、同世代の日本人と仲良くなれたこと、本当の日本人の姿に触れられたことが訪日研究の最大の収穫です」とダンスサークルに参加した学生は述べていました。他にも、生花体験を通じて日本文化に親しみを持ったり、屋台が立ち並ぶ博多の風景に北京の街を思い出した学生たちからの報告は非常に興味深いものでした。特に後者の学生は「博多の屋台は味も結構だけれど、値段も『けっこう』します。帰国後に北京で屋台を見たら、きっと博多を懐かしく思い出すと思います」と述べ、会場の笑いを誘っていました。研究だけではなく、日常的な交流からも日本を楽しもうとしている様子が伝わり、とても頼もしく感じました。 
 今回の訪日研究は8月2日に終了し、学生たちはすでに中国に戻り、現在論文作成をすすめています。そして年明けの1月にはいよいよ、卒業式を迎えます。


beijing_japan02.jpg


===============
学生コメント
・道をたずねたら、目的地まで案内してくれてびっくりした。日本人は本当に親切だと思う。
・来日まで一度も地震を経験したことがなかったけれど、すでに8回くらい余震を体験した。意外と慌てることもなく平気だった。
・日本の学生の研究に対する熱意と主体性に刺激を受けた。
・今回の訪日で、人は優秀な人と接することで、自分の成長を早めることになると感じた。
 今の優秀な人に囲まれた環境は私を成長させてくれたと思う。
・ずっと日本語を勉強し日本研究をしてきたけれど、今回始めて来日して、まさに百聞は一見に如かずだと思った、本当に来て良かった。
・いろいろな国の留学生との交流で視野が広がった。
・博多の屋台を見たとき、北京の風景と似ていると思ったけど、違うところは博多の屋台は味も結構だが、値段も結構だというところ。帰国して、北京で屋台を見たら、きっと博多を懐かしく思い出すと思う。
・八ツ場ダムの研究のため、フィールドワークで何度も川場温泉に行った。はじめ嬉しかった温泉も、もう飽きたかな。
・こちらの大学で長期留学している中国人学生との交流を通じて、たくさんの友達が出来た。彼らの日本に対する考え、中国に対する考えを聞きそれがとても勉強になった。
・ダンスサークルに参加して、日本人学生の輪に完全に入ることが出来たのが私の訪日研究の最大の収穫です。日本の若者と身近に接することで真の日本の姿に触れることが出来たと思う。
・はじめは日本人学生の輪に入れなかったけど、今は生花を習ったりして少しずつ溶け込むことが出来てよかった。
・教会に行ったら、周囲の人がとても親切にしてくれて、病気になったときもいろいろアドバイスをしてくれた。
・中国では清華大学に進学するという夢がかなえられませんでしたが、今回東京大学で勉強することができて、エリート気分を満喫できました。
・ゴールデンウィークに弘前の桜祭りに行った。
・来日前は心配だったけど、結局来てみると不安は解消されて、ふるさとの母が持たせてくれたマスクは2回しか使いませんでした。


Page top▲