横井 彩
市民青少年交流課
国際交流基金(ジャパンファウンデーション)では、東アジアにおける相互理解の促進とネットワーク構築を目的とする「21世紀東アジア青少年大交流計画」(Japan-East Asia Network of Exchange for Students and Youths、略称:JENESYS Programme)の一環として、東アジアコミュニティーの将来を担う各国のNGO/NPO及び教育関係者を招へいしました。
今回は、洞爺湖サミットとの関連性も念頭に、「環境-自然との共生と持続可能な循環社会」をテーマとし、環境問題に取り組んでいるNGO/NPO関係者および、環境教育に取り組んでいる初中等教育の教員・教育関係者を、ASEAN10カ国と中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの計15カ国から合わせて48名招へいしました。
参加者は6月3日から6月16日までの2週間の日本滞在中に、レクチャー、ワークショップ、施設訪問等を通して、自然との共生の考え方に基づく伝統的な日本の自然観や文化と、日本の行政、学校、企業、NGO/NPOによる持続可能な循環社会の実現に向けた取組みを視察しました。
30年に及んだ豊島の住民運動について説明をうける参加者
最初に東京で日本の環境問題や環境教育についてのレクチャーを受けた参加者は、香川県へ移動。最初の訪問地は、静かな瀬戸内海に浮かぶ島々の1つ、豊島(てしま)でした。日本最大と言われる産廃不法投棄現場の規模の大きさと、美しい島を取り戻すための住民運動に費やされた30年という長い年月に、参加者の誰もが衝撃を受け言葉を失いました。経済が発展し消費行動が拡大しつつある自国も無関係ではいられない、と危機感を持つ参加者も少なくありませんでした。
香川県では、ホームステイも体験。中国からの参加者は家庭でのごみの分別に感動し、分別表や分別するホスト・マザーの姿を熱心に写真に収めていました。
棚田再生に取組むNPOの視察
奈良では古民家のならぶ街並みや棚田再生に取組むNPOの活動を視察した後、東大寺で日本の伝統的な自然観に触れるお話を聞きました。フィリピンやインドネシアの参加者からは「どうやったら日本は伝統文化と最先端技術を両立できるのか」という驚嘆の声も。東京で見た近代的なイメージとは別の新たな日本の側面を見て、日本に対する理解・親しみが深まりました。
ミミズが生ごみを分解して堆肥に変える
コンポストには 多くの人が興味津々
小学校と高校を訪問し、環境教育の取組みや設備、環境にやさしい校舎改築の現場を視察しました。参加者は、日本では子どもの頃から学校でさまざまな環境教育を実施していること、またその結果として子どもも環境に対する意識が高いことに感心していました。なお、参加者の多くが、一番楽しかった思い出として小学校での学校給食体験を挙げています。
環境問題や環境教育普及に取組むNGO/NPO団体も訪問。そこで実践されているプログラムや導入している設備には、自国に持ち帰って実施してみたいものがたくさんありました。タイから参加している学校の先生は、西宮市の「エコ・カード」を絶対に自分の学校でも取り入れるんだ、と意欲を示していました。
2週間という限られた期間の中で、参加者は、過密な日程の合間を縫って自主的に意見交換の場を設け、各国の状況や共通の課題などについて夜遅くまで語りあっていました。最終日のシンポジウムでは、環境問題は全ての国が直面する問題であるということを再確認し、このプログラムを通じて知り合った仲間とも連携し、今後も環境問題に取組んでいこうという気持ちを新たにしました。参加者の個別発表では、フィリピンの環境問題の被害住民について語った参加者が感極まり、それに誘われるかのように涙ぐむ参加者が続出。参加者の多くが、他国で起こっている環境問題を自分の生活や自国の身近な環境問題と関連づけて捉えているようでした。
各国でリーダーとしての活躍が期待される若手関係者が一堂に会し、2週間のプログラムを通じて、日本の関係者や他国からの参加者と交流し、今後の連携につながるネットワーク形成について合意に達するなど、有意義な成果を収めることができました。今後もアジア地域での関係者のネットワークが広がっていくことを願っています。