大島 幸
舞台芸術課
撮影:楮佐古 晶章(かじさこ あきのり)
今年2008年は「日伯交流年(日本人ブラジル移住100周年)」。
その開幕を飾る大型事業として、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)は、2月10日から3月2日まで、江戸糸操り人形「結城座」によるブラジル国内4都市(サントス、リオデジャネイロ、ブラジリア、サンパウロ)ツアーを行ないました。
「結城座」は、江戸時代(1635年)、初代・結城孫三郎氏が旗揚げして以来、約370年の歴史を持つ糸操り人形劇団です。今回のツアーでは、古典作品『綱館(つなやかた)』と『新版歌祭文 野崎村の段(しんぱんうたざいもん のざきむらのだん)』を上演(全9回)するとともに、現地の専門家やサンパウロ日本人学校の小中学生を対象としたワークショップ(全4回)を実施しました。
撮影:楮佐古 晶章(かじさこ あきのり)
本ツアーの準備は2007年春にさかのぼります。
「劇場に花道を作るにはどうしたら良いか?」「足場を現地で作れるか?」「字幕はどうしようか?」「人形についての解説を入れようか?」等々......結城座やサンパウロ日本文化センターと協議を重ねてきました。
そして公演当日。劇場入り口にはのぼりや提灯、ステージ上には定式幕(じょうしきまく:歌舞伎などでお馴染みの3色の幕)が飾られ、すっかり日本の雰囲気に。チケットが早々に完売となる中にもかかわらず、劇場には鑑賞を求める人が殺到し、長蛇の列を作りました。
冒頭の人形解説では、"手板"(ていた:人形の操作板)の操作によって様々に変化する人形に、観客の注目が一気に集まりました。
撮影:楮佐古 晶章 (かじさこ あきのり)
そして上演された『綱館』と『野崎村の段』。義太夫節にのせた、まさしく古典作品の上演でしたが、ポルトガル語の字幕をつけることで、観客の共感を得るのに全く問題はありませんでした。それよりも、人間の膝下丈ほどの人形が生み出す、細かな動き一つ一つに敏感に反応が起こり、観客が真剣に見入っていた様子が分かりました。
撮影:楮佐古 晶章(かじさこ あきのり)
『野崎村の段』の最後には、海外公演ならではの演出――通常は足場まで下ろしたままの幕を上げ、人形遣いが足場の上から長い糸で繋がれた人形を巧みに操る様子を公開、こちらも観客の関心を集めました。
公演終了後は、一斉に総立ちとなり、拍手喝采の中で終了しました。「またブラジルツアーをしたい!」という声が結城座からも上がり、出演者と観客双方が満足する事業となったようです。
日伯交流年はまだまだ続きます。私達の事業が、日本とブラジルの友好関係促進の一助となることを祈っています。
撮影:楮佐古 晶章(かじさこ あきのり)