日本研究・知的交流部
小松諄悦
海の中の資源の90%が、わたしたち人類にとって未知のものだ。だから、海底の物質を掘削して、現在の知識で利用不可能と判断されても、すべて保管しておく。未来に利用可能になるかもしれないから。今日の資源の保全は、とりもなおさず、明日の資源の発見になる。
2006年9月12日、横浜シンポジアにて行なわれた「日豪マリン・フォーラム」は、人類の未来に重要な示唆にとむ会議でした。
日本とオーストラリア間の通商協定締結100周年を記念して、2006年は日豪交流年とされました。交流年の知的交流のはしらとして、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)は日豪マリン・フォーラムを開催しました。
オーストラリアは、国を取り巻く海岸線の長さが世界3位で、日本は6位という、ともに海洋国です。間に、東南アジアや南太平洋諸島をはさんではいますが、両国は海で確実につながっています。協力して取り組むべき海に関する課題は、尽きることはありません。
今回のメインテーマは、「マリンリソース(主に海底微生物)」と「海の環境教育」のふたつにしぼりました。日本とオーストラリアの海の専門家そろぞれ6名ずつ参加したフォーラムには、約150名の聴衆が参加、海の珍しい議論にききいっていました。
日本側は、海専門の海洋研究開発機構が全面的に協力してくれました。海底資源については、1万メートルまで潜って、海底掘削を行なっています。海底の微生物、酵素から、化粧品や洗剤が生産されています。一昔前までは考えられないことです。90%も未知の世界があるということは、まだまだ、地球の資源も見捨てたものではないようです。
環境では、オーストラリア側の代表は、グレートバリアリーフ、官民一体となって、海岸地域の保全と活性化に取り組んでいます。その姿勢は、単に珊瑚をまもるだけでなく、地域の漁業や観光などの産業と協力しての地域の活性化も重視してきています。いわゆる環境絶対主義とはひといろ異なる現実主義的な活動を行なってきています。それでも、いや、だからこそというべきでしょうか、管理地域を拡大せざるを得なくなってきていることを、苦渋の表情で報告している姿が印象的でした。
この日、聴衆に最も衝撃を与えたのは、海底6000メートルの深海の空き缶とビニール袋の画像でした。
私たち人間は、結局滅びに向かっているのでしょうか。
未知の海底資源の発見と活用、そして自然破壊。人類の未来に明暗をみた思いでした。