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緊急特集：被災地とつながる 生の声003
今、アートNPOができること
平成23年3月11日。アーティストと4月からのプロジェクトについて打ち合わせをしている折に、東日本大震災に第一報が入りました。その時は、被害がこれほどまでに大きくなるとは予想もできませんでした。 しかし、すぐに16年前の阪神淡路大震災のことが思い起こされました。当時、神戸市須磨区の山手のほうに住んでおり、地震が起きた瞬間、午前5時46分は締め切りが迫っていた原稿を書き上げ、そろそろ寝ようかと思い、机から立ち上がった時でした。随分、長い時間揺れましたが、幸いにも家の被害は微少なものでした。従ってその後、普段どおり眠りました。朝方、友人が私の家が山際に建っているので、心配をして見に来てくれた時、初めてことの重大さに気づいたのでした。見下ろすと新長田の町は火の海になっており、火の粉が山の方まで飛んできていました。私の住んでいたエリアはほとんどの家は被害が少なかったのですが、50ｍほど山を降りると多くの家が全壊か半壊していました。 その後、食料を持って避難所になっている保育園をまわり、子どもたちやお母さんと簡単な体操をして、身体をほぐしたり、自分にできることをとにかく何でもやろうと動き回ったことを覚えています。子どもたちの表情が身体を触れ合うことの中から、徐々にほぐれていくことで、自分のほうが勇気づけられたのだと思います。
今回の震災で、私たちに出来ることは何か。
震災直後の3月18日から20日まで、鳥取で「全国アートNPOフォーラム」が開催されました。ここでは、「今、アートが、アートNPOができること」をテーマに話し合いがなされ、その結果「アートNPOエイド」が立ち上がりました。
被災地のアーティストやアートNPOの活動を資金的な面だけではなく、道具や人的な支援も視野にいれ、同時に映像のアーカイブも始めています。神戸では阪神淡路大震災の折に＜ACT神戸＞を立ち上げ、アートによる被災者支援を行ってきたギャラリー島田を中心に「アート・エイド・東北」が立ち上がり、劇作家・演出家の平田オリザ氏の声がけでも「Arts Vision Network 311」が活動を始めています。
また、DANCE BOXでは4月16日に国際交流基金の地球市民賞の受賞報告会に引き続いて「Dance Live KOBE #1」を開催しました
震災後、関西でのダンス公演はほとんど中止することなく実施されましたが、その時に会場で会ったアーティストから、「何か自分にできることをしたいが、どうすればよいのか」という声がたくさん聞きました。そこで、人それぞれの思い、或いは表現の方法は違っても、被災地から遠く離れた神戸で踊ることで、何かが伝わるとの思いで、公演を実施することにしました。そもそも踊りは＜祈り＞から始まったのですから。午後2時から始まった公演には47組のアーティストが参加し、午後10時まで熱のこもったダンスが展開されました。入場料や飲食の収益金は全て、被災地で活動するアーティストやアートNPOの活動支援金として使いたいと思っています。
復興にはたいへんな時間が必要になってくると思います。私たちも当事者感覚をもって被災地の人たちと中長期的に協働していきたいと思っています。 「Dance Live KOBE」は、今後もアーティストと話し合いを重ねながら継続していく予定です。また、海外のアート関係者からも、励ましのメールをたくさんいただいています。今回ほど、世界や地球ということを身近に感じることはありません。 
しかし、私たちは「がんばれ！日本」という国家単位ではなく、人と人、地域と地域を繋いでいくという意志をもって活動していきたいと思っています。
このような非常時にダンスが何をできるのか。アートが何をできるのか。特に今後起こってくるであろう＜こころと身体＞の問題に関して、静かに熱く継続的にアプローチしていきたいと思います。
大谷燠 NPO法人DANCE BOX http://www.db-dancebox.org
大阪府生まれ。1979年まで舞踊家・制作として活動。1991年TORII HALLプロデューサー就任。1995年「OSAKA DANCE EXPERIENCE」をプロデュース。翌年に「DANCE BOX」を立ち上げ、ジャンルを超えたコンテンポラリーダンスの公演・ワークショップを年間約30本企画制作する。TORII HALL退職後、2002年にDANCE BOXをNPO法人化し大阪・新世界フェスティバルゲート内に「Art Theater dB」を開設。２０１０年度国際交流基金地球市民賞受賞
