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心と心をつなぐ 1 ― 中国人高校生が日本で暮らした11ヶ月
日焼けした人、身長が伸びた人、少し大人びた顔つきになった人――。日本で研修したこの約1年で、グンと成長した様子が見てとれるような28人の中国の高校生たちだ。
帰国前のレセプションで談笑する中、何人かに話を聞いた。
トップバッターは、帰国前報告会で謝辞を述べた張天鴻くん。北海道の立命館慶祥高校では、弁論部に入部した。
「部活動では主に平和とか人権について、それぞれの考えを述べました。部員は20人余り。部内の弁論大会では、中国の農村教育をもっと進めようと日本語で訴えて、第3位になったんですよ!」
ロックが好きで、寮の仲間とのバンド活動にも参加。リズムギターを担当した。
「初めは日本語がうまく話せなかったので、無口でした。それで"変な人"という誤解も受けた。正直つらかったです」。それでも自ら心を開いて、積極的に話しかけるよう努力した。そのかいあって、しだいに身近なバンド仲間をはじめ弁論部員、クラスメートたちと打ち解けあえるように。3年生の卒業ライブではオリジナル曲のほか、北海道出身のロックバンド、GLAYの人気曲である「BELOVED」を演奏、拍手喝采を受けたという。
「日本の高校生と一緒に努力し、汗をかき、心の底から笑いあうという忘れがたい経験ができました。日本で得た友情を大切にしたいと思う」
5月には、北海道の各地を旅した。函館などの観光地はともかくも、長万部町ではシャッターの閉まった商店街を見て、寂しさを覚えたという。
「大好きな北海道は、第2の故郷。だからこそ農業や観光の発展など、北海道のために尽くしたい。大学は、東京大学を目指します」。頼もしい目標を語ってくれた。
張天鴻くん
バンド活動を通じて、クラスメートたちと打ち解けあえるようになりました
バスケットボールの好きな尹柏橋くんは、ひときわ背が高い。山西省の太原市外国語学校から、福井県の敦賀気比高校で研修。中国では珍しい部活動にあこがれて、まっさきにバスケットボール部に入った。
顧問の先生に教えられた「場助人球」という言葉が忘れられない。「『場』はコート、『助』はボールをパスすること、『人』はチームの仲間、『球』はボール。それで『バスケットボール』と読みます。いい言葉でしょ?」。中国ではあまり気に留めなかったチームワークの大切さを、日本の部活動で学んだという。
寮生活では、日本人の寮生5人と仲良くなった。帰国してからも、メールのやりとりを約束した。研修生活を振り返る作文集には「寮は心の港」と書いた。「中国でよくいわれる言葉『家是心霊的港湾』(家は心の港)を自分でもじった造語です。寮母さんと先生は親のようで、寮生たちは兄弟のよう。みんなと一緒に住んでいたから......」。それは自分の家のように安心できる、温かな場所だったようだ。
帰国して9月からは高校2年生になる。1年休学したことになるが、「時間をかけても学校を卒業し、留学先には提携校の早稲田大学を目指したい」。心も体も伸び盛りの若者らしく、前を見据えた。
尹柏橋くん
劉星妤さんは、四川省成都市の成都外国語学校から、愛知県の光ヶ丘女子高校で学んだ。中国ではなじみの薄いカトリック系のミッションスクールで、驚きの連続だったようだ。賛美歌を歌い、祈り、神父の説教を聞く。毎週火曜日のミサは、早朝6時起きで参加しなければならなかった。
「(受験競争の厳しい)中国の学校では勉強ばかりでしたが、日本では規律正しい生活を学んだ。それに日本の高校はいろんな部活や活動があって、うらやましいです」
研修校はミッションスクールだったが、初めてのホームステイ先は寺院だった。庭を掃いたり、客人にお茶を出したり、年末の大掃除も手伝った。生まれて初めて着物を装い、お茶会に出たことも心に残る思い出だ。帯がきつくて歩くのも大変だったが、薄桃色の着物の美しさに喜びも増した。日本人の礼儀正しさやお茶の作法など、伝統的日本文化に触れたいい機会になったようだ。
成都外国語学校には、あと2年通学する。「まずは地元の大学に入って、それから日本の大学に留学したい。漫画やアニメの盛んな日本で、好きな漫画を描くことも夢」。日本での研修を終えて、希望も夢もさらに広がる。
劉星妤さん
(左)ミッションスクールに通いました
(右)生まれてはじめての着物で、伝統的日本文化に触れました
(取材・文 二井康雄、小林さゆり)
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留学ドキュメンタリー
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「心と心をつなぐ 3 ― 中国人高校生が好きになった日本」