折り紙が世界を縮める~マイアミ、アトランタ、リマから寄せられた想い

おりがみはうす
山口 真
松浦 英子
勝田 恭平

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出来上がったコマを回して顔がほころぶパルメット高校(マイアミ)の生徒たち。日本語を学んでおり、日本語の挨拶をしてくれた生徒も


日本を代表する折り紙作家の山口真氏、松浦英子氏、勝田恭平氏は、今年1月から2月にかけて、米国(マイアミ及びアトランタ)、ペルー(リマ)の3都市で折り紙デモンストレーションとワークショップを行いました。
これは、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の日本文化紹介事業の一環で、参加者は、一般の方、日本語学習者、デザインの専門家など多岐に渡りましたが、合計16回の講習では、延べ約850名の参加者が、一枚の紙から様々な形を生み出す「折り紙」の魅力に触れました。
山口氏をはじめとする講師陣の親しみやすく且つ分かりやすい説明で、精緻な造形の魅力と文化的な背景説明により身近な日本文化「折り紙」への理解が一層深まったほか、東日本大震災の被災地支援活動「折り紙キャラバン」の紹介も強い関心を集めました。
専門家として赴いた3名の専門家に、米国とペルーでの事業を終えてのフォト・レポートとエッセイをお寄せいただきました。





山口真:広がる折り紙の世界
 日本の折り紙文化を伝える活動は、どの国に赴いても毎回素晴らしい体験を得るとともに、ますます広がりを見せている折り紙の世界を肌で感じることができます。

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フロリダ国際大学で、被災地の状況や、折り紙による支援活動を語る山口真氏

出来上がったコマを回して顔がほころぶパルメット高校(マイアミ)の生徒たち。日本語を学んでおり、日本語の挨拶をしてくれた生徒も  「折り紙」という言葉は、いまや世界語となり、折り紙文化も日本だけのものではなくなっています。そして、折り紙が日本文化か否かは気にせずに、折り紙そのものを楽しんでいる人は少なくありません。そのような中で、「日本の文化としての折り紙」をどのように伝えていくかは、今後の課題です。
 今回の米国とペルーでの講習では、全ての場所で、折り紙を実際に折る前に、東日本大震災の被災地を折り紙で支援する「折り紙キャラバン」の活動を紹介させていただきました。参加者の皆さんには、大きな関心を持って、活動の様子を見て、聞いていただけたと感じています。これも折り紙の一つの伝え方だと気づくことができました。
 Facebookの私のアカウントには、世界中の折り紙愛好家から友達申請が来ます。あまりにたくさん来るので、誰を承認したか分からなくなるくらいですが、ペルーで手伝ってくれたペルー折紙協会の青年からメッセージが届いた時には驚きました。これから、ますます折り紙で世界の距離が縮まっていくことが楽しみです。


松浦英子:折り紙と震災と日本
 リマの日秘文化会館の正面玄関の吹き抜けには、千羽鶴がぎっしりと吊り下げられていました。3.11の震災を受けて、ペルーの人々が折ったのだそうです。しかし、被災地に送るのは迷惑になるかもしれないという判断から、皆の祈りの形としてここに展示しているとのこと。2011年の東日本大震災は世界にとっても本当に衝撃的だったのだと、遠く離れた国からの気持ちに心を打たれました。
 海外で教える経験は重ねてきていましたが、折り紙の講習を受け持つことが多く、今回の米国・ペルーでは、折り紙についての講義を初めて担当することになりました。日本を出るぎりぎりまで、資料の準備にはいろいろ悩みましたが、各地で関心を集めたのは、現代折り紙の作品写真と展開図、それから被災地の様子と折り紙支援の話でした。
 折り紙には、ただ折って楽しい、美術的あるいは数学的にも興味深いというほかにも、他者に笑顔をもたらすことができるという、その大事な側面を伝えることができたのではないかと思います。

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日秘文化会館で集められた折り鶴




勝田恭平:大きな変化をもたらす一言アドバイス
 今回、講師としては最も若手でした。日本国内で折り紙を教える経験は多くありましたが、海外で一般の人たちを対象に教えるというのは初めての経験でした。日本人であれば誰でも子供時代に馴染みがある折り紙ですが、海外の場合は、全く経験がない人もいるので、教え方には別の工夫が必要となります。
 折り紙の経験が一度でもあるのと、全くないのでは、教える側にも教わる側にも、実は大きな違いがあるからです。例えば、「折り筋をしっかりとつける」「カドとカドをきっちりと合わせて折る」など、本当に単純で当たり前だと思っていることを、一言アドバイスするだけで、できあがりが、がらりと変わるのです。
今回の米国とペルーでの講習会では、大人であっても、童心に返ったかのように、自分が折り上げた折り紙に感動する姿に多数触れて、折り紙を実践する者として、慣れ親しみ、理解をしているつもりだった「折り紙」とは本来どういうものだったかを、改めて、参加者の皆さんに思い出させてもらったような気がします。
日本との時差もあり、講習会の回数を重ねた後半は身体的には疲労を覚えましたが、参加者の方々が見せてくれる笑顔が、僕に最後までやり遂げる力を与えてくれました。



日程
マイアミ
2012年1月30日 パルメート高校、フロリダ国際大学
2012年1月31日 ウェスタン高校、ノバ大学

アトランタ
2012年2月2日 サバンナ芸術デザイン大学(学生及び教員)、ジョージア工科大学紙博物館
2012年2月3日 エルキンズ・ポイント中学校、サバンナ芸術デザイン大学(一般)

リマ
2012年2月6日 日秘文化会館、テレフォニカ財団センター
2012年2月7日 チョリージョス区立文化センター、日秘文化会館

各地での主な講習内容
作品紹介(各教室で約50点ほどの作品を展示)
折り紙の歴史や現代折り紙の紹介
被災地支援活動「折り紙キャラバン」の紹介
折り紙講習(内容は各地の参加者にあわせて変更)





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折ったハートに数ドルと日本語のメッセージを書き添え、「折り紙キャラバン」への活動資金を寄附してくれた学生さんたち(フロリダ国際大学で)

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(左)ウェスタン高校(マイアミ)で、作品に見入る高校生たち
(右)マイアミの小中学生を対象にした講習会。多くの子どもが折ったハートを顔に見立てて遊ぶ(ノバ・サウスイースタン大学図書館で)


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ジョージア工科大学博物館(アトランタ)での展示の様子。地元紙「ジョージア・アジアン・タイムス」にインタビュー記事も掲載された

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サバンナ芸術デザイン大学(アトランタ)での講習会のために、同大のHenry Hongmin Kim講師がデザインしたポスター。さすが芸術大学!
Poster designed by Mr. Henry Hongmin Kim, Associate Chair, Graphic Design at SCAD (Savannah College of Art and Design).


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(左)ジョンソン・美雪教諭<右>が顧問を務める折り紙クラブがあるエルキンズ・ポイント中学校(アトランタ)。熱烈歓迎の横断幕の下で教頭のニック・カシディ先生と。
(右)ハート一つ折っても会話がはずむ


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サバンナ芸術デザイン大学で行われた一般向けの講習会。楽しそうな子どもたちの様子にお父さんも笑顔

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ペルーの各会場に貼られたポスター
Designed by Johnny Garcia F.- Gra'fica Lima S.A.


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(左)ペルー折り紙協会のメンバーが揃いのジャケットを着て手伝ってくれた(ペルー日系人協会日秘文化会館で)
(右)「できた?」という呼びかけに、作品を掲げて応えてくれた(テレフォニカ財団センターで)


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出来上がったシャツとハートを一斉に掲げて喜ぶ参加者(チョリージョス区立文化センターで)



origami17.jpg 山口真
1944年、東京生まれ。日本折り紙協会事務局員を経て、折り紙作家として活躍。1989年、折り紙専門のギャラリー「おりがみはうす」を開設以来、若手作家の育成や、海外の折り紙団体や作家との精力的な交流を行っている。日本折紙学会事務局長、日本折紙協会理事、OrigamiUSA及びBritish Origami Society会員、雑誌『折紙探偵団』編集長。著書も60冊を超える。
国際交流基金事業でも、モロッコ・チュニジア・アルジェリア(1990年)、タイ(1991年)、ウズベキスタン・カザフスタン・ウクライナ(2006年)、インドネシア・マレーシア(2010年)へ渡航し、海外での折り紙紹介の経験が豊富。
ギャラリーおりがみはうす  http://www.origamihouse.jp/
おりがみはうす facebookページ https://www.facebook.com/origamihouse.jp

white.jpg origami18.jpg 松浦英子
1972年、広島生まれ。名古屋芸術大学デザイン学科卒業。パッケージメーカー企画室勤務を経て、1999年「おりがみはうす」に就職。雑誌『折紙探偵団』、「おりがみはうすガレージブックス・シリーズ」の編集、デザインを担当。日本折紙学会及びBritish Origami Society会員。2007年東洋大学文学部教育学科編入、2010年同大学大学院博士課程前期文学研究か教育学専攻
山口真氏に同行し、ウズベキスタン・カザフスタン・ウクライナ(2006年)、インドネシア・マレーシア(2010年)でも折り紙紹介を経験。

white.jpg origami19.jpg 勝田恭平 1986年、東京生まれ。東洋大学経済学部経済学科卒業。英語とアメリカの折り紙を学ぶため渡米、1年間に渡り、サンフランシスコの紙会社と、世界最大の折り紙団体OrigamiUSA(ニューヨーク)で折り紙事情などを学ぶ。2010年「おりがみはうす」に就職。



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