未知の大陸を開拓する:日本映画をフランスに紹介

フランスの映画通から、「日本映画は未知の大陸である」という言葉をよく聞くことがあります。パリ日本文化会館で開催するさまざまな事業の中でも、日本映画の上映は特に人気のあるもののひとつです。2010年の夏から秋にかけては、3人の映画監督の特集を実施しました。


まず7月には、戦前に活躍しながら夭折した山中貞雄監督(1909-1938)を特集。山中監督の作品は、「丹下左膳余話 百萬両の壺」「河内山宗俊」「人情紙風船」のわずか3作品しか現存しませんが、その3作品すべてをパリ・シネマ映画祭との提携により上映する機会を得て、上映会は各回とも、若者から年配の方まで幅広い観客を集めほぼ満席の状況となりました。


201012_Paris1.bmpのサムネール画像9月には、日本を代表する監督のひとり、小栗康平監督(1945- )のフランス初となる全作品上映を実施しました。監督自身に当地まで来ていただき、アントワーヌ・バロー監督による小栗監督へのインタビュー・ドキュメンタリー「夢の森」(国際交流基金助成対象事業)も併せて上映し、両監督の対談を数回にわたり行いました。フランスの評論家たちの解説やトークセッションなど関連イベントも充実していたので、メディアからも小栗監督の芸術性やその作品世界への理解が深まったとの評価がありました。

すっかり定番となった「知られざる監督シリーズ」の第10弾として10月に取り上げた島津保次郎監督(1897-1945)も、フランスでは初の特集上映となりました。著名な映画専門誌「Cahier du cinema」には、「Discover Shimazu」という題名で島津監督のモダニティを絶賛する記事が掲載されたほか、この特集上映の機会に、監督のお孫さんにあたる完倉洋一氏からも「作品が現代人の心を捉えることができれば嬉しい」という喜びの手紙をいただきました。谷崎潤一郎原作の「春琴抄」を映画化した「お琴と佐助」の上映では、主人公の二人の物語を観客が息を呑んで追いかけている感じが伝わってきました。上映後に観客から「さすが純文学には国境を越えて人を魅了する格調の高さがある」との声も寄せられました。

11月には、最新の日本映画を紹介するKINOTAYO映画祭の中で、12月の日米同時公開に先立つワールドプレミアとして「最後の忠臣蔵」(杉田成道監督)の上映を成功させました。
パリ日本文化会館では今後も、新旧の作品、未知の作品を上映して、フランスの映画通に日本映画という名監督・名作の宝庫をさらに開拓していただきたいと考えています。

 

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(C)Yashima Emi

 

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