全ロシア国立外国文献図書館「国際交流基金」文化事業部
(モスクワ日本文化センター)
8月26日。モスクワ中心部にあるストラストノイ劇場から、和太鼓の躍動感あふれる音が夕暮れの街に鳴りわたります。この日、劇場では、打歴40周年を迎える太鼓奏者・林英哲さんのワークショップが行われました。 ワークショップの参加者は、事前にインターネットでの公募に応じた数多くの希望者から選ばれた15名。年齢から経歴まで、何もかも異なる人が英哲さんの指導の下で初めて和太鼓演奏に挑みます。
まずはちゃんと準備運動をしなければいけないと、英哲さんはジャンプをし始めましたが、普通のジャンプではありません。和凧になりきったり、お相撲さんになりきったりと、ワークショップ参加者はステージの上で500回のジャンプ。会場いっぱいに集まった観客の拍手と笑い声に励まされながら、なんとか準備運動を終えると、今度は本格的な大太鼓演奏の練習に入り、正しい立ち位置、バチの持ち方などを、英哲さんから分かりやすく教わります。現在多くの和太鼓グループの演奏に取り入れられているその打ち方は、実は、英哲さんが40年前に自ら考えたものなのです。
和太鼓にはピアノ演奏で使うような楽譜はありません。「ドンドン・ドコドコ」と、まるで歌のように、言葉で曲を覚えるのです。この独特な覚え方に会場も参加者も興味津々。最初はなかなか揃えられなかった演奏も、練習を積み重ねると、見事に意気投合。 そしていよいよ一時間半の練習の成果を見せる瞬間がやってきました。汗をかきながら太鼓を打つ参加者の表情はいたって真剣。「ドンドコ」と口ずさみながらの一生懸命の演奏には、会場も大喝采! 音楽には、国境も言語の壁もありません。それは、和太鼓の音と参加者・観客の鼓動、日本とロシアの心が共振した瞬間でした。