LA:日本語教育のリーダーに求められるスキルとは?:米国教育事情とリーダー研修

ロサンゼルス日本文化センター

アメリカの日本語教育はほとんどが小学校から大学までの学校機関で行なわれています。教師の一時解雇の増加や教育予算カットなど、日本語教育を取り巻く環境も昨今の厳しい経済状況と無縁ではありません。日本語教師も、教室内でのスキルを磨くだけでなく、アメリカ国内の教育政策や行政の動向、外国語教育を取り巻く状況に常に注意を払い、対外的に働きかけるためのスキルも身につけることが求められます。ロサンゼルス日本文化センター(JFLA)では、このような目的に沿ったユニークな日本語教師のための研修を行なっています。

研修参加者と講師

2008年度から始まった「日本語教育次世代リーダー育成研修」は、地方および全米レベルで今後活躍が期待される日本語教師のリーダーを集めた研修です。3回目となる2010年は、ATJ(日本語・日本文学学会)、NCJLT(全米日本語教師会)、JFLAによって、コネチカット州の小学校で教えながらNCJLTの役員を務める先生や、北カリフォルニアで地域の教師会会長を務めながら、ATJの役員としても活躍する大学の先生等、年代や経験もさまざまな6名の参加者が選ばれました。参加者たちは、二部構成で行なわれる研修の前半部分として、8月にロサンゼルスに集まり、講師を務めたUCサンディエゴ校の當作靖彦教授とJFLAの渡邊専任講師とともに、2日間の研修に出席しました。

今回の研修のキーワードは「ネットワーク」と「アドボカシー」。日本語を含む外国語教育にかかわる大小さまざまなネットワークは全米に広がっています。参加者は、日本語教師会をはじめとするネットワーク作りと、それを維持しながら上手に利用して情報を集め、活用するためのノウハウを学びました。「アドボカシー」は聞きなれない言葉ですが、日本語教育の発展のためにその重要性を周囲にアピールしサポーターを増やすための活動を指します。効果的なアドボカシー活動を推進することも次世代リーダーの重要な任務です。


真剣な表情で講義を受ける参加者

参加者はそれぞれ所属する日本語教師会や学校、地域ですでにリーダーシップを発揮している方々ですが、今回の研修は新しい角度から自らの活動を見直す機会となったようです。講師から一方的に学ぶだけでなく、参加者同士の意見交換や実践例の共有を通じて、「教師会のメンバーが求めている役割や存在理由はなにか」、「グループをうまく運営するには、自分ひとりですべてを抱えないでメンバーに係を割りふるほうがよさそうだ」、「より大きなビジョンをもって、後継者に自分の活動をつなげなくてはいけない」など、さらに議論は深まり、実りの多い2日間となりました。

この二部制の研修の後半の会場は11月にボストンで開催されるACTFL (American Council on the Teaching of Foreign Languages) 年次総会です。全米の外国語教育業界で最大規模のイベントである本総会において、参加者たちは学んだことを活かし、次世代リーダーとして更なるアドボカシー活動とネットワーキングに励むこととなります。さまざまなスキルを身に付けて活躍するリーダーたちの頼もしい姿に今後も期待しています。

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