ソウル日本文化センター
今年は巨匠・黒澤明監督が生まれて100年。これを記念して、国際交流基金が所蔵するニュープリントを活用するアジア巡回「黒澤明監督生誕100周年記念映画祭」が韓国・ソウルと釜山で開催されました。韓国での開催は、ソウル日本文化センターが中心となって、韓国映像資料院、フィルム・フォーラム、在大韓民国日本国大使館公報文化院、シネマテーク釜山の5者が共催し、7月1日から8月29日にかけて巨匠の23作品が一挙に上映されました。上映作品には韓国初公開作品が7本含まれるなど、韓国での黒澤特集としてはかつてない規模となり、たいへんな人気を博しました。
特に、本映画祭のスペシャルゲストとして、「用心棒」「影武者」「乱」に出演した日本を代表する俳優・仲代達矢さんと、「羅生門」からスクリプターとして黒澤監督とともに映画人生を歩んできた野上照代さんが来韓された際には、韓国の国民的俳優であるアン・ソンギさんはじめ、多数の監督・俳優・評論家が駆けつけ、大きな注目を集めました。
仲代さんは黒澤作品の生命力について、「黒澤さんは、5年後の人々、いや、100年後・200年後の人々が観ても、決して古くならない映画を遺してくれた。日韓の間の映画の交流を通じて、世界の平和に貢献できれば」と語ってくれました。また、野上さんは「『羅生門』の〔ヴェネチア国際映画祭〕グランプリが、日本映画の扉を世界へ開いてくれた。敗戦後、自信も希望も失っていた当時の日本人に『希望』という力を与えてくれたのは『映画の力』だった」と語り、客席からは熱心な質問が次々と寄せられました。
今回、ソウルの開幕会場となった韓国映像資料院では、若者を中心に22日間でのべ15,194名が黒澤作品に酔いしれ、満席を16回記録するなど、同院始まって以来の大盛況となりました。韓国でも愛され続ける黒澤作品ですが、短期間にこれだけ多くの関心と共感を集める力こそが、まさに黒澤映画の生命力に違いありません。
「黒澤明監督生誕100周年記念映画祭」は今後2011年3月(予定)にかけてフィリピン、インドネシア、タイ、マレーシアの4カ国を巡回します。韓国で湧き上がった熱狂の渦は各国を席巻することでしょう。