マレーシアでは、1980年代に国づくりのため日本や韓国をモデルとして人材を養成する「東方(ルック・イースト)政策」が提唱されて以来、日本語教育に重点を置いています。
中等教育(日本の中学1年生から高校2年生にあたる)に関しては、エリート人材を養成する全寮制中等学校の一部で1984年から日本語教育が導入されていましたが、マレーシア教育省は2004年に一般の中等学校にも日本語教育を拡大する方針を示し、翌年から教員の配置を始めています。
マレーシアでは、2010年6月現在で全国に約2,200校ある中等学校の約4%にあたる85校の中等学校で日本語が教えられています。全寮制中等学校に限ってみれば、全国56校のうち48校と、9割近くの学校で日本語が教えられていることになります。
クアラルンプール日本文化センターは、そのための日本語教員養成事業に協力しています。この事業では、既に中等学校で他教科を教えている現職の先生たちが、マレーシア国内および国際交流基金日本語国際センター(浦和)で約2年半におよぶ研修と実習を受け、日本語教師として各地の中等学校に配属されます。
2年半のうち1年間はインターンとしてマレーシア各地の学校に配属される実習期間ですが、先生たちが生きた日本語に接する機会はそう多くありません。クアラルンプール日本文化センターでは、日本から派遣された日本語専門家による年間を通じての通信指導に加え、できるだけ日本に近い環境で日本人を相手に日本語を使うことができるような短期集中研修を実施しています。
6月14日から18日までの5日間にわたり、学校休暇期間を利用してクアラルンプールに集まった先生たちは、日本大使館や日本人学校、日系デパートへの訪問や在留邦人ボランティアの方との会話練習で実際に日本語を使う研修を行い、最後に互いの成果を発表しあいました。
研修に参加した先生たちからは、「一般の日本人と会話してみて、なかなか思うようにいかないこともあったが、刺激になった」「来年の訪日研修に向けてがんばりたい」「これからもできるだけ日本のアニメやドラマを見るなどして日本・日本語に接する機会を作りたい」と、前向きな声が寄せられました。
今回の研修に参加した先生たちが、晴れて正式に日本語教師となり、各地で生徒たちに日本語を教える日が来るのが楽しみです。