ソウル日本文化センターは韓国映像資料院との共催で、6月中旬から7月初旬にかけて沖縄映画特別展(沖縄映画祭)を開催しました。
本映画祭は、地理的・歴史的な関係から、国境の島、基地の島、観光の島、そして平和の島として発展してきた沖縄を映画的な視点で捉えようとしたものです。琉球王国に始まり日本の一部として幕藩体制に組み込まれた後、日本の敗戦によりアメリカ軍に占領され、その後再び日本に復帰した沖縄。一方、朝鮮王朝以後、日本からの侵略を受け、アメリカ合衆国と旧ソビエト連邦に占領され、冷戦構造の中で分断国家としての歩みを余儀なくされた韓国。両者は地理的・歴史的に共通する部分があり、世界的にみても沖縄以外での開催が珍しい沖縄映画祭が韓国で開催される意義は大きいと言えるでしょう。
映画祭では新旧18の作品を上映しましたが、戦争や戦後の沖縄社会をテーマにした作品など沖縄のアイデンティティを探るうえで重要な社会性のある作品を数多く上映したほか、沖縄をテーマに映画を撮り続けている中江裕司監督の作品や現代の若者の姿を描いた作品も紹介しました。また、シンポジウム「沖縄映画、沖縄アイデンティティ」では、日韓の研究者や映像作家が、地域・歴史研究としての沖縄、映画からみる沖縄のアイデンティティについて考察しました。
沖縄の自然や文化はわれわれを惹き付けてやみませんが、その根底にある沖縄社会は韓国の人々の目にはどのように映ったのでしょうか。映画やシンポジウムを通じて、沖縄は単なる一地域の文化や歴史を越えて、韓国、東アジア、さらには世界につながる様々な問題を提起する場であることも浮かび上がりました。今回の映画祭をきっかけに、沖縄と日本への理解と関心が深まることを願っています。