Photo:Paula Court
ジャパンファウンデーションニューヨーク日本文化センターは、2008年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)と協力し、日米学芸員交流事業を実施しました。2008年6月下旬、MoMAの学芸員3名 ――素描部のCornelia Butler主席学芸員、写真部のRoxana Marcoci学芸員、絵本・版画部のSarah Suzuki学芸員―― が初めて訪日、各地の美術作家や学芸員、美術専門家と交流し、日本の現代美術に対する理解を深めました。
これを受けて、去る11月13日、日本の現代美術界の第一線で活躍される4名の学芸員をMoMAにお迎えし、公開シンポジウム「戦後日本美術」(Postwar Japanese Art)を開催しました。住友文彦氏(東京都現代美術館学芸員)は1950~70年代における日本の前衛美術運動を概観。続いて笠原美智子氏(東京都写真美術館事業企画課長)は、現代アートに表現された、日本における女性の社会的地位と自己意識の変化について論じました。松井みどり氏(美術評論家)は、日本の「ポップ」アートの展開を、一群の作家たちに焦点を当てて紹介。建畠晢氏(国立国際美術館館長)はコンセプチュアル・アーチスト、河原温に焦点を当て、グローバル化する世界に生きる日本人アーチストのアイデンティティの問題を考察しました。
Photo:Paula Court
当日はあいにくの雨模様でしたが、会場となったMoMA内の劇場は、立ち見も出るほどの超満員。MoMAや他の美術館、日本研究者や美術史家、評論家やジャーナリスト、芸術支援団体の代表、一般の美術愛好家や美術専攻学生、ギャラリー経営者など、幅広い人々が一堂に会し、4名の発表者のプレゼンテーションに熱心に耳を傾けていました。聴衆からは「知的刺激に満ちたシンポジウムだった」「日本の現代美術作家の名前は知っていたが、彼らの作品が日本の美術史上、どのような点で画期的なのかを理解する手がかりが掴めた」などのコメントが寄せられました。
学芸員は美術展のプロデューサー。学芸員の国際交流を図り、専門家同士の信頼関係の構築と相手国美術の理解を促進することで、質の高い国際共同事業が生まれるきっかけづくりと文化交流の担い手育成に寄与することをジャパンファウンデーションは目指しています。