メキシコ日本文化センター
メキシコでは毎年全国各地で数多くの芸術フェスティバルが開催されており、海外の様々なジャンルの公演団がこうした催しに参加しています。これらのフェスティバルは政府や自治体の文化機関が主導して、民間企業からの協賛も得ながら運営されており、入場料は無料または安い価格に設定され、多くの人々が海外の文化に触れられるように配慮されています。
ジャパンファウンデーションでは以前からこうした国際芸術フェスティバルなどの機会に日本の舞台芸術をメキシコの人々に紹介するべく事業を展開してきました。今年も5月にメキシコ市で開催された「オリン・カン・国際文化祭」に招待された、茂山七五三氏を中心とした狂言団による公演と、コンテンポラリーダンスのグループBaby-Qの公演に協力しました。狂言の公演では満員の客席から時に笑いがあふれ、字幕を使わなかったにもかかわらず狂言の楽しさを十分に堪能できた様子でした。伝統的な演劇と先端的なダンスという日本独自の舞台芸術は、若者を中心とする多くの観客から高い評価を得ました。
また、7月には尺八の三橋貴風氏と箏の吉村七重氏による邦楽のリサイタルを、メキシコのクラシック音楽の殿堂ともいえる国立芸術宮殿の小ホールで開催しました。日本の伝統的な音楽と邦楽器による現代音楽からなるプログラムを満員の聴衆は熱心に聞き入り、演奏者の三橋氏は、観客の熱意が舞台で感じられてとても良い演奏ができた、との感想を述べていました。
日本の音楽、ダンス、演劇といった舞台芸術の公演団の海外公演は盛んに行なわれていますが、メキシコではこうした日本の舞台芸術が紹介される機会はそれほど多くありません。日本から遠いために公演実施にコストがかかることや、舞台芸術の分野でお互いの情報が不足していることなどがその理由と考えられます。こうした状況ではジャパンファウンデーションのような公的な文化交流・助成機関の支援が大きな役割を果たしています。
数々の公演の成功を見るにつけ、舞台芸術を愛するメキシコの人々に向けて、これからもより多くの日本のアーティストがメキシコを訪れてその作品を発表することを願ってやみません。